芸術家の創作活動から誕生した優れたアート作品は、いつの時代にあっても、地域や歴史を越えて感動を与え、心を豊かにし、生きる力を呼びさまします。大阪では、近現代の絵画や彫刻、デザイン作品などの名作を多数所蔵する「大阪中之島美術館」の建設が進み、中之島が、美術館群を中心に科学館やギャラリー、音楽ホールなどが集まった世界有数の文化ゾーンへと発展することが期待されています。関西経済同友会では、新しい美術館開館を応援するために、企業が所蔵する美術作品を集めた展覧会を開催してきました。今回はその3回目になります。その背景には、大阪の街が長い歴史の中で育んできた、市民や企業が進んで街づくりに貢献するフィランソロピー(Philanthropy)の精神があります。企業家の寄付で建設された大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館の壮麗な建築を見上げるたびに、この街に流れるフィランソロピーの伝統を思わずにはいられません。また展覧会では、次世代を担うこどもたちが、自主的に芸術に触れることを体験する「対話型鑑賞教室」のワークショップを開催してきました。こどもたちが感受性豊かに成長することを願っての重要なプロジェクトです。加えて今回は、1925年の第2次市域拡張で大阪市が東京を抜いて日本第1位、世界第6位の巨大都市に成長した「大大阪」の時代の美術作品を特集展示します。新しいライフスタイルが模索される現在、この時代を振り返ることは、大阪繁栄の原点を再確認する機会にもなるでしょう。文化の力は、人を育て、街を成長させ、新しい社会や時代を切り開きます。展覧会で得られた様々なエッセンスが、新しい美術館に引き継がれ、生かされることを願ってやみません。
総合監修 橋爪節也(大阪大学総合学術博物館/大学院文学研究科 教授)
※ https://corporate-art-collections.com より引用