●横丁のシンボル 水かけ不動
「水かけ不動」の名で親しまれている、法善寺の西向不動尊。そもそもは、お供え物を持ち合わせていなかった参拝客が、思わず水をかけて手を合わせたのが始まりだと伝えられている。それ以来「水かけ不動」として有名になった。苔に包まれてすっかりきれいな緑色になったお不動さんの姿を見れば、たくさんの人たちが水をかけて願いをこめてきた歴史の長さが偲ばれる。「水をかけて、願もかける。語呂合わせですが、そういう意味もこめられています」(法善寺の住職談) すぐそばに、大阪を代表する作家、織田作之助(おださくのすけ)の『夫婦善哉』に登場する店がある。
●「千日前」の由来はこの寺から
法善寺の宗旨は浄土宗で、寛永14年(一六三七)の創建。千日念仏が行われた寺ということから古くより「千日寺」の通称で呼ばれ、「千日寺の前」という意味で、このあたりの地名を「千日前」と呼ぶようになったらしい。昭和20年(一九四五)の大阪大空襲では本堂が焼け落ちてしまったが、本尊の阿弥陀仏は運び出されて難を逃れた。水かけ不動も無事、戦災をくぐりぬけて今に至る。
●爆発と出火、苦難乗り越えた人情
法善寺横丁では、平成14年(二〇〇二)9月にガス爆発による類焼、続く翌年4月には火災が起こり、多くの店が焼失した。そのとき法善寺では、ゆかりのある芸人やアーティストによる落語会やコンサートを開いて、横丁建て直しの気運を盛りたてた。その甲斐もあって、平成16年(二〇〇四)3月には被災したすべての店が営業再開を果たすことに成功。「おおきに、人情を」。横丁を救ったのは、この合言葉に象徴される横丁を愛する人たちの温かい支援だったのだ。
堺筋線/千日前線 日本橋駅
●近鉄線 近鉄難波駅・近鉄日本橋駅
●南海電鉄 なんば駅