●文学界を代表する賞にその名を残す
直木三十五は、明治24年(1891)安堂寺町生まれ。
39歳で書いた『南国太平記』で一躍時代の寵児となり、大衆文学という分野で確たる地位を築いたが、昭和9年(1934)、43歳で夭逝した。
「何度も選考落ちで恥ずかしいから、もう直木賞に応募するのはやめて」と、ある作家が家族に言われたという笑い話がある。直木賞は、規定期間内に発表された大衆文芸作品の中から選ばれる賞で、実は応募方式ではない。この賞は、直木三十五の亡くなった翌年、友人であり文藝春秋社創設者でもある菊池寛(きくちかん)によって昭和10年(1935)に芥川賞と同時に制定された。正式名称は「直木三十五賞」。設立当初は、新人および中堅作家に贈られる賞であったが、近年かなりの筆力をもつ中堅作家が選ばれている傾向から、事実上新人に与える賞ではなくなったとの声もある。そのため、出版・文学界において最高権威といわれる賞となっている。
●市民の手でつくられたミュージアム
直木三十五の功績をたたえることで、自分たちの町に愛着と誇りを感じ、町の活性化につなげたい。その想いで地元空堀の有志が中心に動き出した。資料収集に設立経費の募金活動。趣旨に賛同した直木賞作家たちも呼びかけ人として参加。平成17年(2005)の命日である2月24日、直木の母校跡の隣に開館。晩年に直木が設計し住んだ家をモチーフにつくられた館内は、直木が腹ばいになって書く習性のあったことから畳敷きになっている。
●文学界の一大イベントで盛り上がる
年2回行われる直木賞選考会の日に、当館でも『勝手に直木賞「長屋路地裏選考会」』を開催。発表前に受賞作を予想している本好きには魅力的な催しだ。また、連続文化講座「可能性のまち 上町台地」など、市民参加型ミュージアムとしての幅広い活動が行われている。
■もっと深く知ろう!
【記念館の近くに文学碑も】
生家に近い安堂寺町2丁目には「直木三十五文学碑」がある。記念館の帰りに立ち寄れば、さらに直木三十五の世界に浸れそうだ。
代表作『南国太平記』の一文が刻まれている
開館時間 : 11時~17時
問合せ : 06(6767)1906