適塾

てきじゅく

投稿日:2013/01/22 更新日:

適塾

●日本で唯一の蘭学塾の遺構
激しい空襲のあった大阪で、築後200年以上の姿をとどめる町家。適塾は、江戸末期の天保9年(一八三八)、緒方洪庵(おがたこうあん)が開いた私塾である。1階は、医学者・教育者として活躍した緒方洪庵家族の生活スペース。2階は、蘭学を修めようと勉学に励んだ若者たちの泣き笑いの場であった。

●適塾生の衣食住 ― 勉強そして勉強!
入塾者は、全国から集まってきた。福沢諭吉(ふくざわゆきち)は、貧乏な塾生の一人だった。著書『福翁自伝』の中で、天満橋で安い魚を買い求め、机をまな板にしてさばいた、とある。彼らは、純粋に知識を得ることに貪欲だった。朝から晩まで机に向かい、眠るときでさえ机の上だったという。時代が大きく動いた幕末、「開国か、攘夷か」騒然とするさなか、純粋に勉強一筋という姿勢を貫いたのは、洪庵の教育方針だった。

●緒方洪庵と妻・八重のチームワーク
洪庵は幕末のテレビも電話もない時代に、全国的に知られていた医学者であった。それは種痘を広め、天然痘の撲滅に貢献し、教育者として総合的な人材を育成した功績ゆえだった。適塾の裏手、今橋3丁目には除痘館跡がある。洪庵の功績には、妻・八重(やえ)の存在が大きかったといわれている。17歳で嫁ぎ、全国から集まってくる塾生の世話をしながら、緒方家の主婦として9人の子を育てた。明治20年(一八八七)に亡くなるまで、多くの塾生から母のように慕われていた。2人の情熱は塾生に受け継がれ、日本の近代化の礎となった。
適塾適塾

現在地からルート検索
ホームページ
https://www.tekijuku.osaka-u.ac.jp/
所在地
大阪市中央区北浜3-3-8
交通機関
●Osaka Metro(大阪メトロ)御堂筋線「淀屋橋駅」
●京阪電鉄「淀屋橋駅」
施設情報
開館時間:10:00〜16:00
休館日:
・月曜日(国民の祝日の場合は開館)
・国民の祝日の翌日(土・日・祝日の場合は開館)
・年末年始(12月28日~1月4日)
参観料:
一般 270円
高校・大学生等 140円
中学生以下 無料
この記事は役に立ちましたか?
役に立った 役に立たなかった
6 人中 6 人がこの 記事 は役に立ったと言っています。
同じエリアにこんなスポットがあります!
青山ビル
青山ビル

●蔦(つた)に覆われたレトロビル  堺筋から伏見町を西へ入ると、甲子園球場から株分けされた蔦で覆われたビルが建っている。このスペイン調のビルは、大正10年(一九二一)、輸入食料品店などの経営者だった野 …

大阪金相場会所跡

●江戸時代から続く金融取引の中心地  江戸時代の大坂は、商品の集散地としてだけではなく、金融取引も盛んであった。金相場会所は、一六六〇年代に設立されたとされる。亨保10年(一七二五)に公許の施設となっ …

少彦名神社サムネイル
少彦名神社

●「神農さん」と呼ばれるわけは 大阪・船場の道修町(どしょうまち)にある少彦名神社は、「神農(しんのう)さん」とも呼ばれ、親しまれている。江戸時代、薬種商は、中国医薬の祖とされる神農氏の像や掛軸を床の …

大阪証券取引所ビル
大阪証券取引所ビル

●ドームの外観を残したシンボルタワー 大阪屈指のビジネス街・北浜。昭和10年(一九三五)に建った旧大阪証券ビル市場館は、シンプルなデザインでありながら、列柱が並ぶ楕円筒のエントランス部分が、北浜のラン …

天五に平五 十兵衛横町

●両替商創業の地  両替商が生まれたのは、大坂では寛永5年(一六二八)、天王寺屋五兵衛(てんのうじやごへえ)が始めたのが最初だという。約40年後には、公の機関「十人両替」が誕生。最大手の天王寺屋五兵衛 …